Eli Lilly and Companyの2023年12月期アニュアルレポートについて要約記事を作成します。
はじめに
このアニュアルレポートは2023年1月1日から2023年12月31日までの会計年度を対象としています。以下、2023年12月期として報告します。
業績ハイライト
2023年12月期の業績は、売上高が前期比20%増の341億2,410万ドル、純利益が前期比16%減の52億4,040万ドルとなりました。売上高の増加は主にMounjaro、Verzenio、Jardianceなどの販売増加によるものです。一方、純利益の減少は研究開発費や販管費の増加、法人税等の増加が要因です。
糖尿病・肥満症治療薬事業が好調で、Trulicityが全世界で71億3,260万ドル、Mounjaroが51億6,310万ドルの売上を計上しました。がん治療薬事業ではVerzenioが38億6,340万ドルと大きく伸長。免疫疾患治療薬事業ではTaltzが27億5,960万ドルの売上を記録しました。
CEOのデビッド・リックス氏は「革新的な医薬品の継続的な発見・開発・商業化が長期的な成功の鍵を握る」と述べ、特にMounjaroの肥満症適応の獲得に意欲を示しました。
技術トレンド、自社製品のトレンド
糖尿病・肥満症領域では、GLP-1受容体アゴニストに注力。チルゼパチド(一般名)を有効成分とするMounjaroは肥満症治療の画期的新薬として期待されています。
がん免疫療法や放射性医薬品などにも積極的に取り組んでいます。CDK4/6阻害剤Verzenio、BTK阻害剤Jaypircaの販売が拡大しています。
関節リウマチ治療薬Olumiantは日本でも承認を取得。アトピー性皮膚炎治療薬lebrikizumabの開発も順調に進んでいます。
アルツハイマー病の抗体医薬donanemabは米国、欧州、日本で承認申請中。早期AD患者の治療薬として大きな可能性を秘めています。
成長戦略
がん免疫療法企業のサイエンス37を10億ドルで買収。治験のデジタル化を加速させます。
低分子創薬企業のDICE Therapeuticsを19億ドルで買収し、炎症性疾患領域のパイプラインを強化。肥満症治療薬のbimagrumabに関して、Versanis Bioを6億ドルで買収。
中国市場での成長を目指し、信達生物製薬とがん免疫療法薬の開発で提携。欧州ではAlmirall社と皮膚疾患治療薬で協業しています。
経営状況
損益計算書では、売上高は341億2,410万ドル(前期比20%増)、売上原価は70億8,220万ドル(同7%増)でした。販管費は74億310万ドル(同15%増)、研究開発費は93億1,340万ドル(同30%増)と、先行投資を積極的に行っています。事業利益は65億5,460万ドル(同4%減)、最終利益は52億4,040万ドル(同16%減)となりました。
包括利益計算書では、当期純利益52億4,040万ドルに加え、為替換算調整額などのその他の包括利益が4億8,240万ドルのマイナスとなり、包括利益は47億5,800万ドルとなりました。
1株当たり配当金は前期から増配し、年間で4.69ドルとなりました。自社株買いは7億5,000万ドル実施。株主還元を着実に進めています。
知的財産権の侵害や製造物責任など、事業活動に伴うリスクについても多岐にわたって開示されています。為替変動リスクや海外事業リスクなども詳述されました。
総括
Eli Lillyは2023年12月期も力強い業績を示しました。研究開発や新規事業への積極投資により、Mounjaro、Verzenioなどの新薬の伸長が業績を牽引しています。アルツハイマー病やがん免疫療法などの新領域にも果敢に挑戦し、買収や提携を通じてパイプラインの拡充を図っています。株主還元にも注力しつつ、長期的な成長を目指す経営方針が明確に打ち出されたアニュアルレポートでした。