NVIDIAの2024年度(2023年1月30日〜2024年1月28日)の年次報告書。
業績ハイライト
NVIDIAの2024年度の業績は、前年比で大幅な成長を遂げました。
売上高は前年比126%増の609億2200万ドル、営業利益は同681%増の329億7200万ドル、当期純利益は同581%増の297億6000万ドルとなりました。
事業セグメント別では、コンピューティング&ネットワーキング事業の売上高が同215%増の474億500万ドルと大きく伸長し、同事業の営業利益は320億1600万ドルと全体の97%を占めました。グラフィックス事業の売上高は同14%増の135億1700万ドル、営業利益は58億4600万ドルでした。
CEOのJen-Hsun Huang氏は、データセンター需要の急増がコンピューティング&ネットワーキング事業を大きく牽引したとコメント。企業や顧客各社がAIをあらゆる分野に活用し始めており、NVIDIAのGPUコンピューティング技術への需要が高まっていると強調しました。
技術・製品トレンド
NVIDIAは2024年度、AI分野での技術リーダーシップを一層強化しました。
同社は大規模言語モデルやジェネレーティブAIのトレーニングや推論に最適化されたGPUコンピューティングプラットフォーム「NVIDIA AI」を発表。企業がカスタムAIモデルを構築・運用できるクラウドサービス「NVIDIA DGX Cloud」や「NVIDIA AI Foundations」も立ち上げました。
自動車分野では、NVIDIA DRIVEプラットフォームの採用が広がりました。BYD、XPENG、GWM、Li Auto、ZEEKR、Xiaomiなどの新興EVメーカーが同プラットフォームを採用。自動運転アルゴリズムの進化に伴い、NVIDIAの車載システム需要は今後大きく拡大すると見込まれます。
成長戦略
NVIDIAは2024年度、AI分野での事業拡大に向けて積極的な外部連携を進めました。
クラウドサービスプロバイダー各社と提携し、NVIDIA DGX Cloudの提供基盤を整備。Microsoftとは産業用メタバース基盤の開発で協業しました。
MediaTekとは車載システムのSoC開発で提携。台湾のEMS大手Foxconnとは次世代EVの共同開発を進めています。
経営状況
NVIDIAの2024年度の業績は以下の通りです。(単位:百万ドル)
[損益計算書]
売上高:60,922(前年比+126%)
売上総利益:44,301(同+188%)
営業利益:32,972(同+681%)
税引前利益:33,818(同+709%)
当期純利益:29,760(同+581%)
[包括利益計算書]
当期純利益:29,760
その他の包括利益:70
包括利益:29,830(同+588%)
過去3年の業績推移は以下の通りです。(単位:百万ドル)
年度 2022 2023 2024
売上高 26,914 26,974 60,922
営業利益 10,041 4,224 32,972
当期純利益 9,752 4,368 29,760
2024年度は売上高、利益ともに大幅な増収増益となりました。データセンター向けの需要拡大が業績を大きく押し上げた格好です。
NVIDIAは2024年度、213億9300万ドルを投じて自社株買いを実施。1株当たり0.16ドルの四半期配当も継続し、株主還元を拡充しました。
リスク要因としては、米政府による対中輸出規制の強化が挙げられます。特定の高性能半導体の対中輸出にライセンスが必要となり、NVIDIAの中国ビジネスに悪影響が出ています。地政学リスクへの対応が引き続き課題となるでしょう。
総括
NVIDIAは2024年度、AIブームの追い風を受けて過去最高の業績を達成しました。
特にデータセンター向けの需要拡大が業績を大きく牽引。同社のGPUコンピューティング技術は、大規模言語モデルやジェネレーティブAIの学習に不可欠なソリューションとして広く採用が進んでいます。クラウドサービスや自社開発したAIソフトウェアスタックの拡充にも注力し、ビジネスの幅を広げました。
自動車分野でも、NVIDIA DRIVEの採用が加速。同社は自動運転の実用化に向けて、車載システムからデータセンターまでを支えるプラットフォームをいち早く確立しています。
一方で、地政学リスクには引き続き注意が必要です。米中対立の深刻化により、一部の製品で対中輸出規制が強化されるなど、事業環境は予断を許しません。NVIDIAはサプライチェーンの再編などを通じて、こうしたリスクへの対応力を高めていく構えです。
長期的な成長ストーリーに揺るぎはないものの、外部環境の変化には機敏に対応していく必要があるでしょう。技術優位性と市場の圧倒的な支持を武器に、同社がこの先もイノベーションを主導し続けられるか。NVIDIAの動向から目が離せません。
2024年度の業績と戦略を総括すると、NVIDIAはAI分野での圧倒的なプレゼンスを確立し、データセンターや自動車などの戦略市場で大きく事業基盤を拡大することができました。
技術リーダーシップを基軸に、同社は今後もAIコンピューティングの可能性を切り拓いていくでしょう。世界の産業と社会に変革をもたらすNVIDIAの挑戦は、新たなステージに入ったと言えるかもしれません。