Unityの2023年12月期(2023年1月1日〜12月31日)の年次報告書の要約は以下の通りです。
業績ハイライト
2023年12月期の業績は以下の通りでした。
・売上高は21億8,730万ドル(前年比57%増)
・Create Solutionsの売上高は8億5,920万ドル(前年比20%増)
・Grow Solutionsの売上高は13億2,810万ドル(前年比97%増)
・営業損失は8億3,280万ドル(前年は8億8,220万ドルの損失)
・純損失は8億2,630万ドル(前年は9億1,950万ドルの損失)
営業損失と純損失は、主にironSourceの買収に伴うのれん償却費や無形資産の償却費の増加によるものでした。Grow Solutionsの大幅な売上増加も、ironSourceを通年で取り込んだ効果によるものです。
経営陣は、「ironSourceとのシナジー創出やコスト管理の徹底により、長期的な収益性改善を目指す」とコメントしています。
技術トレンド、自社製品のトレンド
Unityは、リアルタイム3Dコンテンツ開発プラットフォームのリーディングカンパニーとして、ゲーム業界のみならず、製造業、建設業、映画業界など幅広い産業に対してソリューションを提供しています。
特にAI分野への取り組みを強化しており、「Unity Muse」によるAIを活用したコンテンツ制作支援や、「Unity Sentis」によるゲームへのAIモデルの組み込みなどの新機能を提供開始しました。
またクラウドゲームや「Supersonic」によるゲームパブリッシングサービスなども成長分野と位置付けています。
成長戦略
2022年11月にはモバイル広告プラットフォームのironSourceを30億ドルで買収し、Grow Solutionsを大幅に拡充しました。
一方で、非中核事業の整理を進めており、今後はUnity Engine、マネタイゼーション、AIソリューションに経営資源を集中させる方針を示しています。
地域別では、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域やアジア太平洋地域で高い成長を遂げた一方、中国ではゲーム規制の影響などにより低調でした。
経営状況
損益計算書では、売上原価の増加により売上総利益率が前年の68%から66%に低下しました。ironSourceの統合やリストラに伴う一時費用により、営業損失は8億3,280万ドルとなりました。
包括利益計算書では、為替換算調整額のマイナスにより、包括損失は8億3,060万ドルとなりました。
キャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローが2億3,470万ドルのプラスとなり、前年からは大きく改善しました。一方で自己株式の取得により1億7,400万ドルのマイナスとなりました。
リスク要因としては、主力のゲーム業界の競争激化や景気後退の影響、ironSourceとのシナジー創出の遅れ、主要顧客への依存、技術革新への対応の遅れなどが挙げられています。
総括
2023年はモバイル広告プラットフォームのironSourceを買収し、Grow Solutionsが大きく拡大した1年となりました。一方で買収に伴う一時費用の計上により、損失額は前年から若干縮小したものの、依然高水準にあります。
今後は、統合効果の早期創出や、注力分野への経営資源シフトにより、中長期的な収益性の改善を目指していく方針です。技術面でもAIやクラウドなどの新領域への投資を継続し、ゲーム業界に留まらない成長機会の獲得を図ります。