要約記事
Coinbaseが2023年12月31日に終了した会計年度の年次報告書(10-K)を発表
2012年に創業されたCoinbase Global, Inc.は、2023年12月31日を期末とする会計年度の年次報告書(Form 10-K)を米証券取引委員会(SEC)に提出しました。本記事では、その内容を要約してご紹介します。
業績ハイライト
2023年12月期の総収入は31億834万ドルで、前年同期比3%減となりました。純利益は9,487万ドルと前年の純損失から黒字に転換し、調整後EBITDAは9億6,365万ドルと大幅な改善を示しました。
ただし、主力の取引収入は15億1,965万ドルと前年比36%減と苦戦しました。一方、サブスクリプションおよびサービス収入は14億689万ドルと78%増加し、収益の安定化に寄与しています。
CEOのBrian Armstrong氏は「2023年は製品開発を加速し、既存のサービスの強化に注力した1年だった。Coinbaseはこの1年で基盤を大きく強化し、今後の成長に向けて財務的にも良い地位についている」と述べています。
技術トレンド、自社製品のトレンド
Coinbaseは暗号資産の取引だけでなく、ステーキングやレンディングなどのDeFi関連サービスの拡充に取り組んでいます。2023年にはイーサリアムのレイヤー2ソリューション「Base」の開発を進め、よりスケーラブルな取引環境の提供を目指しています。
機関投資家向けのCoinbase Prime、個人投資家向けのCoinbase Appなど、ユーザー層に合わせた製品ラインナップの拡充も図っています。UXの改善により、暗号資産への投資をより身近なものにしていく方針です。
成長戦略
2023年はOne River Digital Asset Management(ORDAM)を買収し、機関投資家向けサービスを拡充しました。海外展開も進め、新たに6つの国・地域で事業を開始しています。
地域別では米国が売上の88%を占めていますが、英国やシンガポールなどのアジア市場でのプレゼンスも高めています。一方、一部地域の規制環境の不透明さが事業拡大の課題となっています。
経営状況
連結損益計算書は、総収入31億834万ドル、純利益9,487万ドルでした。前年は26億2,495万ドルの純損失でしたが、大幅に改善しています。ただ、総収入は前年比3%減と成長には至っていません。
セグメント別では、トランザクション収入が15億1,965万ドル(前年比36%減)、サブスクリプション等収入が14億689万ドル(同78%増)でした。暗号資産市場の低迷が取引収入に影響しましたが、金利収入などが伸びたことでサブスクリプション収入が大きく増加しました。
主なリスク要因としては、暗号資産価格の変動、競合他社との競争激化、サイバー攻撃、規制環境の変化などが挙げられています。特に一部地域の規制当局との摩擦は事業継続のリスクになると指摘しています。
総括
2023年のCoinbaseは、業績面では増収とはなりませんでしたが、サブスクリプション収入の増加で収益構造の改善が進みました。純利益は前年の赤字から黒字に転換し、財務基盤は安定しつつあります。
製品面ではDeFi領域の拡充に注力し、機関投資家向けサービスの強化や海外展開も着実に進めています。一方、暗号資産市場の低迷や規制環境の不透明感は事業拡大の足かせになっています。
2024年はコア事業の強化と、暗号資産の実用化に向けた取り組み加速がポイントになりそうです。業績の本格的な回復とともに、規制当局との関係改善も重要な課題と言えるでしょう。Web3時代の金融インフラを担う存在として、Coinbaseの動向から目が離せません。