2023年度アニュアルレポート(Form 10-K)の要約記事。
【モデナ社 2023年度業績報告:mRNAワクチンの先駆者が描く次なる成長ストーリー】
モデナ社が2023年12月31日を末日とする2023年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで)のアニュアルレポートを発表しました。COVID-19ワクチンで大きな成功を収めた同社が、次の成長に向けてどのような戦略を描いているのか見ていきましょう。
業績ハイライト
2023年度の売上高は前年比64%減の68億4,800万ドルとなりました。COVID-19ワクチンの売上が大幅に減少したことが主因です。一方、研究開発費は48億4,500万ドル(前年比47%増)、販売費及び一般管理費は15億4,900万ドル(同37%増)といずれも増加。営業損失は42億3,900万ドル(前年は94億2,000万ドルの営業利益)、当期純損失は47億1,400万ドル(前年は83億6,200万ドルの純利益)となりました。
CEOのStéphane Bancel氏は次のようにコメントしています。「COVID-19ワクチンの需要減少により厳しい1年となりましたが、他の開発パイプラインは着実に進展しています。RSVワクチンの承認申請や、がんワクチンの後期試験の進展など、中長期的な成長に向けた取り組みを加速させていきます」
技術トレンド、自社製品のトレンド
同社は引き続きmRNAプラットフォーム技術を活用した感染症ワクチンや希少疾患治療薬の開発を進めています。特に、RSVワクチン候補「mRNA-1345」は高齢者を対象とした第III相試験で高い予防効果を示し、2024年前半の承認取得を目指しています。
がん領域では、個別化ネオアンチゲン療法「mRNA-4157」が第II相試験で良好な結果を示し、FDAからブレイクスルー セラピー指定を取得。メラノーマと非小細胞肺がんを対象とした第III相試験を開始しました。
成長戦略
感染症予防ワクチンと希少疾患治療を2本柱に、さらなるパイプラインの拡充を目指します。感染症では、RSVとインフルエンザの複合ワクチンや、サイトメガロウイルス(CMV)ワクチンの開発を加速。希少疾患では、プロピオン酸血症(PA)とメチルマロン酸血症(MMA)の治療薬を2024年に後期試験に進める計画です。
外部連携にも注力しており、中外製薬とのmRNAワクチン製造に関する戦略的提携、Metagenomi社との遺伝子編集療法の共同開発など、積極的に推進しています。
経営状況
損益計算書を見ると、COVID-19ワクチンの売上減少が業績に大きく影響したことがわかります。製品売上高は前年比64%減の66億7,100万ドルでした。一方、研究開発費は48億4,500万ドル(前年比47%増)と積極的な投資を継続。営業利益は42億3,900万ドルの損失(前年は94億2,000万ドルの利益)となりましたが、パイプラインの進展により今後の業績改善が期待されます。
連結包括利益計算書では、為替換算調整額などのその他の包括利益を含めた包括損失は44億6,700万ドル(前年は80億1,600万ドルの包括利益)でした。
なお、2022年8月に発表された30億ドルの自社株買いプログラムは、2023年12月末時点で16億6,700万ドルが未実施となっています。
事業等のリスクとしては、COVID-19ワクチンの需要減少や競合他社の参入、開発中の製品の承認遅延、サプライチェーンの混乱、知的財産を巡る係争などが挙げられています。
総括
モデナ社の2023年度は、COVID-19ワクチンの需要減少により厳しい業績となりましたが、RSVワクチンやがん治療薬の開発は着実に進展しています。mRNAプラットフォームを活用した次世代ワクチンや治療薬の開発を加速させることで、中長期的な成長を目指す方針です。COVID-19ワクチンで蓄積した知見とインフラを活かし、新たな予防・治療ソリューションを提供していくことが期待されます。一方で、パイプラインの開発遅延や競合の参入など、リスク要因にも注意が必要です。モデナ社がどのようにポストコロナの時代を乗り越え、mRNAのリーディングカンパニーとしての地位を確立していくのか、今後の動向が注目されます。