MicroStrategy社、2023年12月期決算を発表
MicroStrategy社が2023年1月1日から2023年12月31日までの会計年度
業績ハイライト
2023年12月期の売上高は4億9626万ドル(前年比0.6%減)、営業損失は1億1505万ドル(前年は12億7574万ドルの損失)、当期純利益は4億2912万ドル(前年は14億6980万ドルの損失)となりました。
単一セグメントで事業を行っているため、セグメント別の業績開示はありません。地域別では、米国が売上高の約57%を占める最大の市場で、欧州・中東・アフリカ(EMEA)が約31%でこれに次いでいます。
CEOのフォン・レ氏は「ビットコインへの投資が業績を大きく左右する不安定な1年となったが、企業分析ソフトウェア事業は底堅く推移した。AIなどの先端技術を積極的に取り入れ、お客様に価値を提供し続けることで、将来の成長を目指す」とコメントしています。
技術トレンド、自社製品のトレンド
MicroStrategy社は、企業向け分析ソフトウェアのリーディングカンパニーです。フラッグシップ製品の「MicroStrategy ONE」は、大規模な分析基盤の構築を支援します。クラウドネイティブのアーキテクチャを採用し、主要なクラウド環境すべてに最適化されているのが特長です。
また、ジェネレーティブAIの機能を製品に組み込むことで、AIを活用したアプリケーション開発を加速させています。自然言語インターフェースによる高度な分析をビジネスユーザーでも利用可能にしています。
成長戦略
同社の成長戦略は、本業のソフトウェア事業の強化とビットコイン事業の拡大の2本柱です。ソフトウェア事業では、製品のクラウド化を推進するとともに、パートナー企業との連携を強化し、お客様のDXを支援していく方針です。
一方、ビットコイン事業では、2023年中に約5万7000ビットコインを追加購入し、総額で19億ドル超の投資を行いました。ビットコインの価格変動が業績に与える影響は大きいものの、長期的な価値の向上を見込んでいます。
経営状況
損益計算書と包括利益計算書の主要項目は以下の通りです(単位:千ドル)。
損益計算書
2023年12月期 | 2022年12月期 | 2021年12月期 | |
売上高 | 496,261 | 499,264 | 510,762 |
営業利益 | (115,047) | (1,275,742) | (784,527) |
当期純利益 | 429,121 | (1,469,797) | (784,527) |
包括利益計算書
2023年12月期 | 2022年12月期 | 2021年12月期 | |
当期純利益 | 429,121 | (1,469,797) | (535,480) |
その他包括利益 | 2,357 | (6,258) | (3,658 |
包括利益 | 431,478 | (1,476,055) | (539,138) |
ビットコインの評価損益が業績に大きな影響を与えており、利益が大きく変動しています。本業の収益力はまだ高くない状況です。
同社は現在のところ配当を行っておらず、内部留保の拡充を優先する方針としています。
事業等のリスクとしては、ビットコイン価格の変動や規制の変更、情報セキュリティ、為替変動など、デジタル資産に関する不確実性が挙げられています。
総括
MicroStrategy社の2023年12月期決算は、ビットコイン関連損益の影響を大きく受ける内容となりました。本業のソフトウェア事業は堅調ながら、利益率の改善が課題です。一方、ビットコイン価格の回復により、多額の損失計上から一転して純利益となりました。
先端技術を取り入れた製品戦略と、ビットコインへの長期的な投資が同社の成長戦略の柱となっています。ビットコイン事業では価格変動リスクをどう管理していくかが問われるでしょう。ソフトウェア事業では、クラウド化の加速とAI活用が業績拡大のカギを握ります。
デジタル資産という新しい分野での取り組みは注目されますが、事業運営の安定性という点ではまだ不透明な部分もあります。今後の事業戦略の遂行と、本業の収益力強化が期待されます。